薬草を見つけるチンパンジー

機能 Function

私たちは、病気になったときや体の具合が悪いとき、薬を飲んで体調を回復させる。動物の場合はどうか?犬を飼っている方はよく知っていると思うが、犬は胃の調子が悪いとき、草を食べて調子を戻す。これと同じような行動を、野生のチンパンジーがすることがアフリカで確認されている。タンザニアにある国立公園に、弱ったオスのチンパンジーがいた。寄生虫病にかかったらしく、飼育員がいくら餌を与えても食べようとはしない。ある日、このオスのチンパンジーは、森である種の植物の茎の皮をはぎ、中の髄(ずい)をしかめっ面をしながら吸っているのが観察された。次の日、このチンパンジーは体調を取り戻し、元気になった。その後の分析で、この草はヴェルノニア(Vernonia amygdalina)というキク科の薬草であり、寄生虫の産卵を抑制する成分が含まれていることが判明した。さらに、この薬草の葉や樹皮には毒があり、チンパンジーが毒のない茎の髄だけを吸っていた行動が理にかなっていたと言える。誰かに教えられたのではなく、チンパンジーは本能的に最適な薬草を見つけ出す能力、いわば自己治療能力を備えているのである。

機能分類 Functional Classification

移動・廃棄・循環:
自己治療

環境ソリューション分類 Environmental Solution Classification

関連文献 Related Literature

応用技術 Technical Application

私たちの生活の中に当たり前にあるお医者さんや薬は、野生のチンパンジーの世界にはない。そんなチンパンジーにとって胃が悪くなるのは死活問題である。ご飯を食べられなくなるからである。チンパンジーの薬草には虫下しや下痢止め、解熱剤、抗菌薬など胃腸の調子を直すものが多く発見されていて、胃腸薬を中心に新薬開発が行われている。

商品・サービス Products and Services

  • 新薬

業種 Type of Business

応用技術提案 Proposals of Appilication Technique

現在開発されている新薬の四分の一は植物由来で、さらに何十万もの検査をされていない薬理効果の可能性のある化合物を持つ植物が知られている。もしあなたが新薬を探すとしたら、どこから探し始めるか?いろいろな種類のある植物の中から新薬を選びぬくのには、何百年もかかるかもしれない。そんな時、チンパンジーの自己治療の能力を利用できればとても役に立つ。チンパンジーが自己治療に使う薬草は、ヴェルノニア以外にも多くのものが観察されている。例えばイチジク属の薬草(Ficus exasperata)を、チンパンジーはかまずに飲む。この薬草は、チンパンジーにとって危険な腸内の寄生虫を殺す物質が含まれ、しかも大腸菌などチンパンジーに欠かせない有用細菌には悪影響を及ぼさない。この薬草を飲み込むことで、かむことによって破壊されやすい物質を最大限利用していることもわかった。このように自己治療(セルフメディケーション)の能力を持つとされるチンパンジーの食性を観察し、薬草の研究をすることで、新薬の開発につながるであろう。

応用業種提案 Proposals of Appilication Type of Business

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