かじって磨くネズミの歯

機能 Function

リス、ネズミ、ビーバー、カピパラ・・・これらの動物に共通するのは、幅広く先端のするどい歯(門歯)を持つことである。これらの動物は齧歯(げっし)類と呼ばれている。門歯は1対ずつ、計四本の歯が上下のあごからしっかりと生えていて、色々なものをかみ切るのに役立つ。門歯は敵への反撃や植物をかじるための道具として使われるが、生え変わるのでは、その最中に、敵が襲ってきても反撃できない。げっ歯類の歯は、生え変わらないように進化したのである。門歯は一生伸び続けるので、硬いものをかじることで常に削っていなければ、やがて歯が伸びすぎて物を食べることが出来なくなってしまう。ペット化されたリスやハムスターはあまり硬いものを噛まなくなってしまったので、人の手で彼らの歯を切ってあげなくてはならないことも起きている。 野生のげっ歯類の門歯は、歯の外側と内側とですり減り方に差がある。この差は、歯の外側の表面が硬く厚いエナメル質、内側が軟らかい象牙質からできているために生じる。つまり、上顎の門歯が下顎の門歯をこすると内側の象牙質だけが削られて無くなり、外側のエナメル質がさらされて、物を削るのに適した「のみ」のような鋭い状態が保たれるのである。これを自己鋭利化とよび、門歯は効率的な方法で鋭い状態が保たれているのである。因みに、げっ歯類の学名「Rodentia」は、ラテン語の「かじる(齧る)」という意味で、この特徴ある「齧(かじ)る歯」をもつことから、げっ歯類とよばれるのである。

機能分類 Functional Classification

効率(省エネ、省資源、軽い):
自己鋭利
防御・安定:
生体組織制御

環境ソリューション分類 Environmental Solution Classification

関連文献 Related Literature

Attenborough, D. 1979. Life on earth. Boston, MA: Little, Brown and Company. 319 George McKay; Fred Cooke; Stephen Hutchinson; Richard Vogt; Hugh Dingle. 2004. The Encyclopedia of Animals: A Complete Visual Guide. Berkeley: University of California Press. 608 p.

応用技術 Technical Application

商品・サービス Products and Services

業種 Type of Business

応用技術提案 Proposals of Appilication Technique

自己鋭利化するげっ歯類の歯のメカニズムを、産業や工業で使用する機械の刃に利用できるであろう。例えば、トラクターの刃の部分にげっ歯類の歯の仕組みを応用すれば、刃が劣化することがないので、常に深く土を耕すことができるであろう。 歯の再生治療の人への応用が成功すれば、毛髪や肝臓、腎臓などの臓器も再生することができるようになるかも知れない。紙を切るはさみ、食材を切る包丁、木を切る剪定ばさみなど、私たちの身の回りには刃が使われた道具がたくさんある。使っているうちに刃が鈍くなってしまうので、定期的に研いで、時には新しく購入しなければならない。自己鋭利化するげっ歯類の歯の仕組みを応用した刃であれば、手入れを気にせず、長い間切れ味を保つことができる。またげっ歯類の歯の形成メカニズムを解明することで、私たちの歯の治療に役立てることも期待できる。

応用業種提案 Proposals of Appilication Type of Business

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